大好きなスチュアートの初監督作品、面白くないはずはないと思うけど、それはスチュアートの人柄や音楽が大好きなのであって、彼の作った映画まで大好きになるとは限らない。
ダウンダウンのまっちゃんが好きだけど、まっちゃんの映画は全然楽しめなかったような前例もある。
なので、楽しみにしつつも、イマイチだった時にがっかりしなくて済むように、期待はしないで観た。
ニック・ドレイクやイアン・カーティスなどの言及から始まるのが、ものすごくイギリス映画っぽい。
ハイ・フィデリティのように会話の端々にアーティストやバンドの名前がたくさん出てくる。
ビートルズやストーンズを始め、スコティッシュバンドの代名詞、アズテックカメラやパステルズ、変なトリビアで10ccやらパールジャムだとか。
まあ、そんなことは全然よくて、僕は冒頭の精神病院のくだりで早くもハマった。
ちょっと17歳のカルテのようなのだけど、全然陰鬱さはない。
精神科医がイヴに話した、底辺から抜け出して、豊かな暮らしを手に入れるには、まず必要なのは水と食事と睡眠、そして、家や家族、友達、お金、セックスなんかがあり、芸術や音楽はピラミッドの上の層に上がってから、というのが興味深かった。そんなことないと思うけど、そうなのかもしれない。だとしたらつらい。
イヴはその精神科医の言う通りにせず、音楽で暮らしを豊かにしようとする。そんなイヴのひたむきな姿にワクワクするのが、このゴッド・ヘルプ・ザ・ガール。因みにこのゴッドは音楽の神様。果たして音楽の神様はイヴに微笑むのか。
音楽への愛がすごいのだけど、やはりスコットランドが舞台だし、フットボールも大事みたい。序盤のなんてことないサッカーのシーンが良かった。
女の子がプレイしてて、キラキラするスポーツ第一位はバレーボールだけど、第二位はサッカーだと思っている。この映画はオシャレなファッションが持ち上げられがちだけど、エミリー・ブラウニングのサッカージャージ姿が素敵だった。
海街diaryでのサッカーをする広瀬すずには敵わないけど、エミリーも良かった。もっと見ていたかった。
イヴが精神病院から抜け出て、ジェームズと出会い、音楽に希望を見出し、ひたむきに頑張る姿は世界に一つのプレイブックを彷彿させるし、イヴがジェームズでなく、ハンサムなだけのいけすかないバンドマンとのよからぬ関係になってしまうくだりは、17歳の肖像のようなむず痒さがあったり、思ってた以上に引き込まれた。ミュージカルはストーリーがおざなりになりがちな気がするのだけど、ちょっとよく出来過ぎていた。
正直、序盤のミュージカルシーンを観た第一印象はあまり芳しくなかったのだけど、キャシーが加わるあたりから
印象が変わってきた。これはかなりいいんじゃないかと。
終盤のパーティーのシーンでしっかりクライマックスを迎えるし、音楽の神様はイヴに微笑むのか、という結末も、よくできた映画のフォーマットに則っている。スチュアートやるな。さすがだ。
内容うろ覚えになってるし、間違ってたら嫌なので、言及しきらないけど、いいシーンやいいセリフやら本当にたくさんあった。
ちょっとした脇役の「人生はむごい、でも麗しい」というセリフすら響いた。
ちょっとしたユーモアも盛り込んでたり(大事!)、ほろりとくるいいシーンもあるし(なくてもいいけど、あると嬉しい)、これはいい映画だ。
スチュアート、でかした、 大金星だ。
音楽史に名を残す偉大なアーティストがたくさんいるけど、映画まで作ったアーティストはスチュアートだけだ。
しかも、その映画がこんなに素晴らしいなんてすごすぎる。
前売り券がまだ手元にあるし、公開されたらまた観に行く。
0 件のコメント:
コメントを投稿